家庭洗濯等取扱表示

「家庭洗濯等取扱方法」の表示・JIS規格に準拠する必要あり

私たち消費者が、出したお金に見合うだけの価値・品質を持った製品を安心して購入できるということは、「この世の中でいちばん大切なこと」と言っても過言ではないでしょう。公正な取引と流通があってこそ、安全・安心・快適な生活が成り立ちます。

そうした社会を守るために、日本では政府が中心となってさまざまな消費者保護対策を進めています。その対策の一環として、経済産業省では工業製品の品質基準や安全基準を定めた「日本工業規格(JIS Japanese Industrial Standards)」を掲げ、国内で販売されるすべての商品に準拠するよう求めています(2019年7月以降、標準化対象に「サービス」を加え、名称を「日本産業規格」に改称する予定)。

また、内閣府の外局である消費者庁は、JIS規格や「家庭用品品質表示法」にもとづき、消費者が日常使用する家庭用品を対象に、商品の品質について事業者が表示すべき事項や表示方法を定めており、これにより消費者が商品の購入をする際に適切な情報提供を受けることができるように努めています。

衣料品などの品質表示

沢山の洗濯ばさみ

衣料品などの繊維製品については、家庭用品品質表示法により品質表示をおこなうよう義務づけられています。

品質表示については、下げ札・ペーパータグでも織りネームタグなどの貼り札でもよいとされていますが、隠れたり見えなくなったりしない「わかりやすい位置に」表示することが求められています。

品質表示・混用率

革ジャン

繊維・皮革製品の場合、使用している素材について種類ごとの比率(混用率)を百分率(%)で明示するよう定められています。「綿100%」、「羊毛50% カシミア50%」などといった形です。皮革素材も使っている場合、「牛革」、「ワニ革」など、由来動物の種類を明記します。このように、製品全体の中での素材使用比率を示す方式を「全体表示」と言います。

これに対し、「分離表示」という形式がとられることがあります。製品の部位ごとに分けて組成繊維を表示する方式です。表示形式についてあまり厳密な規定はありませんが、わかりやすく表示することが求められています。たとえば、「たて糸 綿100% よこ糸 レーヨン100%」、「地糸 ポリエステル100%、柄糸 レーヨン100%」などといった形です。

品質表示・はっ水性

レインコート

布地や皮革の水をはじきやすい性質を「はっ水性(撥水性)」と言います。レインコートなど製品によっては重要な性質ですので、表示することができます。

JIS規格で定められた「繊維製品の防水性試験方法」にもとづく試験をおこない、規定された水準以上のはっ水性が認められたときに「はっ水(水をはじきやすい)」などといった表示が可能になります。洗濯などによりはっ水性が失われる製品の場合は、「水洗い後は撥水効果がなくなります」などその旨を付記する必要があります。

家庭洗濯等取扱方法

アイロン系表示

家庭で洗濯や漂白、乾燥、アイロンがけをおこなうにあたっての注意事項を、JIS規格で決まった記号をつかって表示します。現行の最新版は2012年に改訂されたものです。

繊維製品のケア方法や、洗濯などの際に回復不可能なダメージを与えることのない処理・操作方法についての情報を消費者にあたえることを目的とします。

この表示は身ごろの内側に縫いつけられた布製の「縫い付けラベル」、すなわち、「織りネームタグ」に表示されることがほとんどです。「容易に取れない方法で繊維製品に取り付けなければならない」と定められているからです。「消費者が簡単にわかる箇所に見やすく、縫い目などに隠れず」取り付けるように、とも定められています。

取り扱い方法をあらわす記号は、洗濯、漂白、タンブル乾燥、自然乾燥、アイロン仕上げ、ドライクリーニング、ウエットクリーニングの順番でならべます。いずれかの取り扱いができないケースでは、その扱いをあらわす記号に「×」を付けて載せます。

基本記号と付加記号

洗濯表示

家庭洗濯等取扱方法は、JIS規格で定められたわかりやすい記号と数字、簡単な絵などで表現することになっています。記号には5つの「基本記号」と、その他の「付加記号」があります。

基本記号1・洗濯処理記号

「洗濯」という処理への対応は、「洗濯おけ」の形をした記号であらわします。波立つ水面で表現された水の部分に、上限の水温をあらわす数字を書く場合もあります。

基本記号2・漂白処理記号

「漂白」という処理への対応は、「正三角形」の形をした記号であらわします。

「ふつうの正三角形だけ」ならば、塩素系と酸素系、両方の漂白処理ができます。

「斜めに2本の線が入っている」記号は、酸素系による漂白は可能ですが、塩素系は不可という意味です。

また三角形に「×」が重なっていれば、「漂白処理はできない」ことを意味します。

基本記号3・乾燥処理記号

「乾燥」という処理への対応は、「正方形」の形をした記号であらわします。さらに、「正方形に内接円」が描かれている記号は「タンブル乾燥」処理への対応を意味します。

「正方形に内接円、円内に点が2つ」は「洗濯後のタンブル乾燥が可能で、排気温度の上限は80度」をあらわします。

「正方形に内接円、円内に点が1つ」は、「洗濯後のタンブル乾燥が可能、排気温度の上限は60度」です。

「正方形に内接円」に「×」が重なっていれば「タンブル乾燥不可」です。

「正方形のみ」はタンブルを用いない乾燥です。

  • •縦の一本線は、脱水を行った後のつり干し乾燥をあらわします。
  • •縦の二本線は、脱水を行わないぬれつり干し乾燥をあらわします。
  • •横の一本線は、脱水を行った後の平干し乾燥をあらわします。
  • •横の二本線は、脱水を行わないぬれ平干し乾燥をあらわします。
  • •斜め一本線は、日陰干しをあらわし、上記のタテヨコの線記号と組み合わせます。

基本記号4・アイロン仕上げ処理記号

「洗濯」という処理への対応は、「洗濯おけ」の形をした記号であらわします。アイロンの本体に打たれた点の数が底面の上限温度をあらわします。

「点3つ」は200度が上限。

「点2つ」は150度が上限。

「点1つ」は110度が上限です。

「×」が重なっていれば、アイロン仕上げ処理は不可です。

基本記号5・商業クリーニング処理記号

「商業クリーニング」処理への対応は「円形」の形をした記号であらわします。

「円形」の下に1本、または2本のヨコ線が引かれることがあり、それぞれ「弱い処理」、「非常に弱い処理」をあらわします。生地が繊細なので、強くあつかってはいけないことを意味します。

「円形」の中にアルファベットの文字が書き込まれて可能な処理の種類を表示することがあります。

「P」が書き込まれていると、「パークロロエチレン」という溶剤を使ったドライクリーニングが可能という意味です。

他方、「F」が書き込まれている記号は、蒸留温度150~210度、引火点38度以上の石油系溶剤によるドライクリーニングに対応していることをあらわします。

また「W」が書き込まれていれば、「ウエットクリーニング処理ができる」という意味です。

以上の記号に「×」が重なっていれば、「その処理は不可」を意味します。

法定表示事項・表示者名・連絡先

コインランドリー

当然のことながら、以上のような情報を表示するメーカー名、ブランド名とその連絡先は表示するよう義務づけられています。会社名、住所、電話番号は最低でも記載します。混用率と洗濯等取扱方法が下げ札と縫い付けラベルに分けて表示されている場合は、その両方に記載します。

このように、織りネームタグは法律の定めにしたがって消費者に必要な情報をわかりやすくコンパクトに伝える役割をになっています。